民主新政権誕生で各団体コメント 「影響なし」も政策注視

2009年09月04日

 衆院選挙で308もの大量の議席を獲得し、政権与党となった民主党。業界内からは新政権に対する「不安」と「とまどい」の声が多く聞こえてくるが、酒類業界の各中央団体では概ね冷静さを保っているようだ。

 「54年もの間、自民党と言わば〝ツーカー〟で事を進められてきた。民主党政権が新たに誕生したことで、これまでどおり、業界の思いが受け入れられるのか不安」(地方清酒メーカーA)。「中央会に民主党とのパイプがあるのか心配」(地方清酒メーカーB)。こうした声に対し、日本酒造組合中央会の淺見敏彦副会長は本紙の取材に応え、「当組合は、政党に依存して成り立っている組合ではないので、政権が代わったからといって全く心配していない。われわれが正しいことを言い、それにどこまで対応してくれるかがその時の政権、政党の能力で、民主党の方がその能力は高いかもしれない。政権与党が変わるたびに希望や失望を抱いてはいけない。既得権益集団で恩恵を受けているのなら別だが、われわれの業界はそれとは違う」と強調する。

 民主党とのこれまでの関係については、「政権与党として自民党とは酒税研究会など勉強会などを通じて長く付き合ってきたので、あえて党名を挙げるとすれば、自由民主党支持の団体として良い関係を築いてきた。だからと言って、今回、政権与党となった民主党と疎遠であったという訳ではない。中央会にも民主党の勉強団が来て、われわれは業界事情を説明をさせてもらったし、きき酒などもしてもらった」とこれまでの関係を話す。

 民主党内にも「国内酒造・酒販振興議員連盟」と言う名称の議連が存在し、代表は野田佳彦幹事長代理、顧問には藤井裕久最高顧問という実力者らで構成されており、「党として議連がある以上、議連の人たちが何も言わないということはあり得ない」。

 民主党の政策集で、アルコール度数別課税の導入を検討すると打ち出していることについては、「〝健康〟という前提から度数別課税の検討を行うようだが、筋の通ったことを言うことは野党として戦ってきたので当然のこと。これが導入されると極端な税負担の変動となるので、『清酒・焼酎などの現行の税負担に配慮しつつ』という前置きがなされている。しかし、これは詰めた議論ではなく、アルコール度数別課税の単純導入などできるはずがない」と否定した。

 また、同様に業界が不安視している租税特別措置法(以下、租特)の撤廃については、「私はかねてから租特は撤廃を要求している。租特87条については、租特であること自体が間違っており、租特ではなく本則化、つまり恒久化してもらいたいと思っている。民主党も、『清酒・焼酎には配慮する』と言っており、配慮して、もっと低い税率にしてもらえれば租特はいらない。酒というのは文化であり、税に振り回されるものではない。今の税制は、税ありきで議論されており、その結果、大きな歪ができている。それが自民党税調からも解放され大いに議論できるようになることは良いことなのかもしれない」と恒久化することで問題はないとした。

 民主党新政権については、「不安はないが、過剰な期待もしない。政権に期待するのではなく、国民がこれだけ多くの議席を与えた党が、良い政府、良い党になるように日本酒造組合中央会としても動いていくことが必要ではないかと考えている」と述べた。

 他中央団体も政権交代に対し、「現時点で影響はない」との見方が大勢で、毎年秋に行う税制改正要望書の提出についてもそれぞれ例年同様に粛々と行うようだ。各中央団体のコメントは次のとおり。(順不同)

 全国小売酒販組合中央会・四十万隆会長

 小売中央会としては、選挙前から小売酒販業界が置かれた現状を自民、民主ともに訴え、要望してきた。政権が変わったからと言ってそれほど大きな影響はないと考えている。

 ビール酒造組合・松沢幸一会長

 ビールは大幅減税、発泡酒は減税、新ジャンルは維持、で訴えていく。ビール系に課せられる税は他に比べて高いと言ってきており民主党が掲げた度数別課税については同じ方向かと思う。しかし、酒中連の一員としてあらゆる酒の増税に反対するという立場は変わらない。

 全国卸売酒販組合中央会・塩本昇専務

 民主党が業界に対する具体的な政策を掲げている訳ではないので、今の段階では見守っているという状況。卸に影響が出るような政策が打ち出されればその都度、考えをまとめて対応していくことになる。

 日本洋酒酒造組合・下村芳夫専務

 組合としてはウイスキーと焼酎との整合性を図るためにアルコール度数別課税を要望しており、それに沿う形になるかという期待もあるが、新政権の方針が見えない中で静観している段階。

 日本蒸留酒酒造組合・草部契之専務

 当業界も中小企業が多く、租特の適用を受けているので、これは続けてもらうよう働きかけていきたい。同時に、これまでどおり比例逓減税率の範囲を拡大しないよう訴えていく。