【鹿児島】5月28日、地理的表示「薩摩焼酎」のPRが本格的にスタートした。鹿児島県産のさつまいもを原料とする、県産の本格芋焼酎であることを、世界基準で認める「薩摩」の表示。その表示を、信頼の証(あかし)とするための県内焼酎メーカーの決意表明ともいえる“薩摩焼酎宣言”を同日、鹿児島県酒造組合連合会の本坊喜一郎会長が、伊藤祐一郎鹿児島県知事に手渡し、公式に宣言。「薩摩焼酎」が日本へ世界へと向け、強力な情報発信を開始した。
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地理的表示は、WTOトリプス協定に基づき、地域を指定し産地表示を認め知的所有権を保護するもの。世界ではボルドー、シャブリ、シャンパーニュなどのワイン、蒸留酒ではスコッチやコニャック、アルマニャックなどが有名。同種の酒類であっても、ほかの産地で造られたものには表示が認められないことから、固有の価値を世界へアピールする武器ともなっている。
日本では国税庁長官が指定。蒸留酒では、壱岐(長崎県壱岐市)、球磨(熊本県球磨郡・人吉市)、琉球(沖縄県)--の3地域が指定先発組み。「薩摩」(奄美を除く鹿児島県)の指定告示は平成17年12月22日で後発だが、他地域と異なり、原料の産地にまで踏み込み、原料原産地と焼酎産地との一体化という特異な価値を内包しているのが大きな特徴だ。
「薩摩」の表示が認められるのは、「鹿児島県産のさつまいもと水を使い、鹿児島県内で製造・容器詰めされた本格焼酎」。国が主原料のさつまいもが県産であることに“お墨付き”を与え、世界がその基準を認めたことになる。県内の奄美群島で製造される黒糖焼酎は対象外。県産であっても米焼酎や麦焼酎には「薩摩」表示はできない。現在、県内には111場の焼酎製造場があり、うち奄美の製造場を除く87場が、条件を満たした場合に「薩摩」の表示ができる。
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当日は知事との謁見に先立ち、県庁で会見。県酒造組合連合会の諮問機関、「地理的表示をPRする検討委員会」(産官学連携・16人の委員で昨年8月発足、原口泉委員長=鹿児島大学教授)の本坊喜一郎、吉野馨(県酒造組合副会長兼専務理事)両特別委員、原口委員長、小正芳史副委員長(小正醸造社長)らが、“薩摩焼酎宣言”や「薩摩」認証マーク(統一ロゴマーク)の公募などについて説明した。
“宣言”では、「世界のブランドと同じく、『薩摩』と表示できる意味を大切に受け止め、『薩摩焼酎』を世界中で愛される蒸留酒に発展させる」とし、県産のさつまいもや水へのこだわりはもとより、「薩摩焼酎」を起点とした取り組み、生産農家との連携強化や環境保全、伝統・文化の発展、地域社会への貢献、“世界中の人々との交流促進”--などを掲げている。
本坊特別委員は「地域的な鹿児島の焼酎がいまや、全国で認知されているが、さらに広げ、海外へのPR活動を推進していきたい」と表明。原口委員長は、「『薩摩』は、焼酎の4つの地理的表示のなかで、最も厳しい定義付けがされ、その品質の良さを消費者に広く知っていただきたい」と訴えた。同席の委員からは、「『薩摩』表示に恥じない品質の焼酎を造り、『薩摩』をPRしていく覚悟だ」との言葉もあった。
伊藤知事との謁見では、鹿児島県本格焼酎鑑評会の総裁も務める知事に“薩摩焼酎宣言”を手渡し、主旨を説明。知事は、「私も(鹿児島県のさつまいもと水で造った県産の芋焼酎に)こだわって飲んでいる」と語り、世界への飛躍も目指す焼酎メーカーの決意表明に賛同した。
PR委員会では、県物産をアピールする海外のイベントでも、“薩摩焼酎宣言”の訳文を配布するなどで、海外でのPRの機会も活かしていく考えだ。
認証マークは全国から公募。“薩摩焼酎宣言”をアピールするため、5月末日までに全国紙、地方紙に掲載した新聞広告で、募集したほか、県酒造組合のホームページでも案内する。
採用者賞金は100万円。募集は6月末日に締め切り、7月初旬には認証マークを決定し、周知普及を目指す。
以下宣言文
私たち鹿児島県の焼酎製造者は、薩摩の伝統、文化として継承されてきた芋焼酎に対して、WTO加盟国間の国際的な知的所有権の保護規定であるTRIPS(トリプス)協定に基づき、地理的表示として「薩摩」が厳格な条件の下に認められたことを誇りに思います。
世界の酒で、地理的表示が認められているのは、ワインのボルドー、シャンパーニュ、ブランデーのコニャック、ウイスキーのスコッチ、バーボンなどがあります。このような世界のブランドと同じく、「薩摩」と表示できる意味を大切に受け止め、次のことに取り組んでいきます。これにより、「薩摩焼酎」を世界中で愛される蒸留酒に発展させます。
1、私たちは、鹿児島県産のさつまいもと水にこだわり、鹿児島県内で製造された本格焼酎のみに「薩摩」を冠し、品質の証しとします。
2、私たちは、地元の生産農家と協力し、安全で高品質なさつまいもを育て、「薩摩焼酎」の更なる品質向上に努めます。
3、私たちは、「薩摩焼酎」を育んできた鹿児島の風土に感謝し、美しく恵まれた自然環境の保全に努めます。
4、私たちは、「薩摩焼酎」を取り巻く鹿児島の豊かな伝統、文化の発展に努めます。
5、私たちは、「薩摩焼酎」に関わるすべての人々と連携し、地域社会の発展に寄与します。
6、私たちは、「薩摩焼酎」の美味しさと文化を世界の人々に紹介し、交流を促進します。
7、私たちは、「薩摩焼酎」の長所を紹介するとともに、酒の特性にかんがみ、節度ある健康的な飲み方の啓発に努めます。
平成19年5月1日 鹿児島県酒造組合連合会 http.//www.tanshikijyoryu-shochu.or.jp