酒販年金事件東京地裁 関被告に懲役7年の実刑判決

2007年10月05日

 全国小売酒販組合中央会(藤田利久会長)の酒販年金基金約144億7000万円が回収不能に陥った事件で、背任と業務上横領の罪に問われた同中央会の元事務局長・関秀雄被告(51)の判決公判が9月28日、東京地方裁判所で開かれ、平出喜一裁判長は懲役7年(求刑懲役10年)の実刑判決を言い渡した。

 業務上横領について平出裁判長は、「いずれも周到な計画に基づく巧妙な犯行。被告人は、中央会や酒政連からの信頼を裏に、組合員の生活の安定のための基金から合計3400万円もの大金を横領し、それを自己の生活費や遊興費として使用した」と述べた。

 また、被告人が無罪を主張していた背任については、「被告人の職歴や実績から、理事らが年金共済事業の運用について被告人に全幅の信頼を置き被告人に任せきりだったことに乗じて、リベート欲しさから最も基本的な任務である投資対象商品の仕組みやリスクなどの調査研究を行うべき任務や、運用方法やリスクを軽減する任務を尽くさず、本件投資に踏み切った。その結果、中央会が抱え込んだリスクは通常ではありえないほど大きく、年金資産に及ぼした損害は計り知れない。老後の生活資金として中央会を信頼し、資産を託していた加入者の喪失感は察するに余りある。このように本件投資による損害は極めて深刻であるが、投資対象商品のリスクを検討した上で分割投資を実行していれば、このような重大な損害を被らなかった。欲に目をくらまし任務を尽くさなかった被告人の責任は極めて重い」との判決を下した。

 一方で、「本件業務上横領事件は、中央会の年金資産や酒政連の活動資金の管理体制の杜撰さにつけこんだ犯行であり、これらの管理が適正に行われていればこれほどまでの損害が発生したとは考えられず、その意味では中央会側の管理体制および理事らの職務執行のあり方に問題があったと言わざるを得ない」と中央会の管理体制を指摘し、さらには「被告人一人に罪を負わせるのは酷なところもある」と付け加えた。

 判決後、記者会見を開いた同中央会の藤田会長は、「今後も年金資金の回収には全力を挙げて対処する。裁判所の判断として、中央会の管理体制の杜撰さなどが指摘されていると言われているが、今日の判決を踏まえて対応しなければいけないので、これから先のことは十分に検討してからでないと今は言えない」と語った。関被告は控訴するものと見られる。