【松山】雪雀酒造(松山市柳原)の猪野敏朗社長(42)が昨年12月に専務から昇格して1年が経とうとしている。11月末に他界した父の故・字朗氏の遺志を受け継ぎ、新社長として高品質の酒造りを目指す。今後の展開について話を聞いた。
■まず抱負を聞かせて下さい。
「日本酒の需要は低迷し、伸ばすには時間がかかる。回復は一朝一夕にいかず、小さな積み重ねが重要だ。消費者の目線に立った製品開発やモノの考え方をしないメーカーは取り残される。顧客が望むモノを提案しなければいけない」
■具体的には?
「中びんや小びんを充実させるべきだ。最近の経済紙の調査にもあったように若い20代の5割はアルコールを飲まない。良い酒を少しずつ飲んでもらうことが大切だが、そうなると『脱1・8L』だ。当社も小びん180mlを純米吟醸『風恋(ふうれん)』と特別純米『純音(すみね)』の2アイテムで出しており、今後も品種を増やしたい気持ちはある」
■業界は「ひやおろし解禁」を打ち出しましたが。
「9月9日発売に全国の各蔵元があわせるのは非常に良いことだ。冬の新酒を貯蔵した『ひやおろし』は熟した味わいが特徴で、秋の需要期に期待できる」
■若手でつくる「四国清酒懇話会」の新会長にも就任されました。
「当会は2年に1度の開催だが、年1度に増やしても良いと思う。四国4県の若手同士が交流する場であり、業界が安定した品質を提案していくために話し合うのは大切なことだ」
■中小は租特法の延長切れが懸念されますが。
「それでなくても民事再生法の申請や転廃などが多く、なくなれば廃業が増える。延長が無理なら『地酒振興支援策』や『税法の改正』など形は違っても引き続き同様の施策を望みたい」
■日本酒以外の多角化はどうでしょうか?
「メーカーとして消費者においしい酒をいかに飲んでもらうかを重視しており、普通酒もおろそかにできない。あくまで日本酒がベースであり、メインだ」
■最後に今後の展開をお願いします。
「県の地酒アンテナショップ『蔵元屋』は、顧客に落ち着いて飲んでもらう場所として好評だ。どういう人々が集まっているのか。消費者の現場を見るのは重要で、そういう意味でも9月に日本産清酒輸出機構が主催したニューヨーク視察に参加した。日本食ブームの米国など海外の輸出は期待され、日本酒情報を知ることは今後も欠かせないだろう」
【プロフィール】 猪野敏朗氏 昭和39年10月、北条市(現・松山市)出身。61年松山商科大学(現・松山大学)経済学部卒後、東京の酒類卸・太田商店に勤務したあと庁醸造試験所(現・独立法人酒類総合研究所)の研修生を経て平成元年に入社。6年から専務を務め現職。15年には酒類業界の歴代トップが就任するJC(日本青年会議所)酒類部会会長も務めた。42歳。