【熊本】民事再生法の適用を申請した美少年酒造(緒方直明社長、下益城郡城南町)の債権者説明会が4月23日午前11時から、同町の火の君総合文化センターで行われた。裏金問題について緒方社長は、個人的な責任との説明に終始。弁護士からこれまでの経緯が報告されるとともに、「現在の資金繰りは極めてひっ迫した状況で、どんなに遅くても今年5月中に資金枯渇が予想される」と経営危機が訴えられ、支援企業への速やかな経営移譲への理解を求めるものとなった。
冒頭、緒方社長は「私個人が、しでかしましたことで、債権者の皆様には大変なご迷惑をおかけしましたことを、心からお詫び申し上げます」と陳謝。事故米事件後の昨年9、10月は売り上げが10分の1から20分の1にまで落ち込み、その後の支援で今年の3月には「半分ぐらいにまで回復していた」とも打ち明けた。「その最中(さなか)に私のとんでもない不祥事が発覚致しまして、事故米事件後にいただいたご恩ご支援に対しまして、お詫びのしようもない」と謝罪した。
現在、同社の事業を4社、▽重光産業(重光克昭社長、熊本市)「味千ラーメン」展開▽エヌ・エル・エー(千堂純子社長、福岡市)健康食品・化粧品製造▽日本食品機能分析研究所(津﨑慎二社長、同)食品検査分析▽アイマック(神屋直邦会長、同)経営コンサルタントが共同で引き受ける意向を示しているが、それらスポンサーについて緒方社長は、現状の雇用を維持することや醸造技術の伝統を継承することへ期待を寄せた。4社はブランドの存続も表明している。
民事再生法適用申請の経緯については弁護士が次の通り説明。「3月31日に報道された裏金問題により、厳しい社会的批判での売上の著しい減少、取引停止、返品要請等を招き、通常の事業を継続しながら自主再建を果たすことは不可能な状況となり、4月16日午後1時開催の取締役会で熊本地方裁判所に民事再生手続開始申立を行うことを決議し、同日同庁に申立を行い、翌17日同庁から弁済禁止保全処分決定・監督命令が発令された」。
さらに今後については、「従業員の雇用を守り、事業価値を維持し、債権者の納得のいく再生計画案を立案するため、スポンサー企業として表明したグループとの間で、円滑な経営移譲に向けての協議を真摯に行っていきた」として理解を求めた。現経営陣は経営移譲への道筋が立った後に退陣するとした。
同社の経営破たんは、「これだけコンプライアンスが言われる中では当然なこと」だとした上で、「130年の歴史がある酒造会社で、地元の城南、熊本で重要な役割を担う企業であり、優秀な人材を無にすることは社会資本の面からも問題がある。道は民事再生しかなく、支援企業によって全く新しい美少年として生き返らせていきたい」と訴えた。経営移譲には最終的には債権者の同意が必要で、移譲までの時間短縮に傾注する考えが示された。
説明会に出席した県内の卸会社の役員は、「これまで積極的な説明がなかったことが残念だ」との感想をもらした。業界全体の信頼失墜に対し、同業の酒造業者や流通業者へ、謝罪がなかったことへの不信感もあらわにした。
美少年酒造は明治12年創業、大正9年設立。現従業員は54人。直近平成19年10月20年9月の売上高は13億円(▽営業利益=7800万円▽経常利益=4800万円▽当期純利益=4000万円)。
申立・負債(3月31日現在)は、19億931万803円(うち金融機関債務6行17億2401万5621円、買掛金・手形金1億8529万5182円)。酒税等の公租公課、賃金など労働債権の未払いはないという。債権者数は105名。