【広島】全国の銘醸蔵に従事する杜氏でつくる日本酒造技術研究連盟(木村忠彦理事長)の会合が4月24日、東広島市西条町御薗宇のグランラセーレ東広島(平安閣)であり、広島杜氏を中心に東北から九州まで約40人が一堂に集結した。日本酒醸造の技術力及び品質向上を目指し、全国新酒鑑評会の時期にあわせて今年で43回目。講演を柱とした研究会や新酒の出来栄えを競う「全国選抜清酒品評会」を通して相互の技術交流を深めた。
同連盟は、卓越した吟醸酒造りで国内をリードしてきた賀茂鶴酒造が同社出身の杜氏を育成したのが始まりで、現在は条件を限定して業界全体に門戸を開いている。所属するのは、一流の杜氏ばかりで、圧倒的な実力と権威はもちろん品格も重視される。
講師3人を招いた研究会は、清酒「上喜元」で知られる酒田酒造(山形)で社長と杜氏を兼務する佐藤正一氏がトップバッターを務め、雄大な鳥海山を望む同社の酒造りについて丹念に紹介。次いで土佐鶴酒造(高知)の池田健司杜氏は、「技術だけでなく、良い水、良いコメと原料も大切」と説得力ある講演を披露し、(独)酒類総合研究所の家藤治幸部門長は、清酒酵母の魅力や特性について学術的な説明で会場の関心を引きつけた。
メインの品評会には、全会員36人から吟醸酒の新酒36点が出品され、(財)日本醸造協会の石川雄章(たけあき)副会長を審査長に酒総研や県、広大の関係者ら5人が3審制で入念に審査。その結果、賀茂鶴酒造の友安浩司杜氏が見事1位を獲得し、褒章授与式で栄誉が称えられた。石川氏は、審査報告で「品質が高く、今年ほど審査に苦労した年はない。コメが溶けやすい年で敬意を表したい」と賛辞を贈った。
会場では、木村理事長があいさつしたあと総会に移り、幸田邦昭副理事長が事業報告。西条税務署の桑原義和署長や松田顕彦酒類指導官も来賓で出席し、「意義深い会で、新たな清酒の歴史を作られると確信している」と今後の発展を祈願。参加者は、懇親会で親睦を図り、「この品評会で10位以内に入るのは至難の業」「1位になるのは全国鑑評会より難しく、杜氏の夢」「技術者同士の横のつながりが素晴らしい」と感激していた。
【成績】▽1位=賀茂鶴酒造(賀茂鶴)▽2位=浅間酒造(秘幻)▽3位=東北銘醸(初孫)▽4位=秋田酒造(秋田晴)▽5位=賀茂鶴酒造(賀茂鶴)▽6位=酔鯨酒造(酔鯨)▽7位=盛田(ねのひ)▽8位=梅錦山川(梅錦)▽9位=齎彌酒造店(由利正宗)▽10位=朝日酒造(朝日山)
【審査員】▽(財)日本醸造協会=石川雄章(たけあき)副会長・審査長▽(独)酒類総合研究所=小林健副部門長、福田央主任研究員▽広島県立食品工業技術センター=土屋義信センター長▽広島大学大学院先端物質科学研究科=平田大教授
【会員】▽広島=國重弘朗(綾菊酒造)、池田健司(土佐鶴酒造)、今田美穂(今田酒造本店・富久長)、今岡功二郎(中尾醸造・誠鏡)、石川達也(竹鶴酒造)、原純(原本店・蓬萊鶴)、瀬戸富央(三宅本店・黒松千福)、幸田邦昭(賀茂鶴酒造)、峠本忠義(同)、友安浩司(同)▽愛知=濱嶋安伸(盛田・ねのひ)▽長野=那須賢二(宮坂醸造・●澄)▽岡山=小畑正弘(宮下酒造・聖)、辻麻衣子(辻本店・御前酒)、原潔巳(平喜酒造・喜平)▽新潟=木曽健太郎(朝日酒造・朝日山)、小林昌行(丸山酒造場・雪中梅)▽九州=平野繁昭(萱島酒造・西の関)、古川新一郎(小林酒造本店・萬代)▽山形=今野賢次(出羽桜酒造)、後藤英之(東北銘醸・初孫)、佐藤正一(酒田酒造・上喜元)▽但馬=山根福平(梅錦山川)、西垣昌弘(亀齢酒造)▽高知=浅野徹(司牡丹酒造)、能勢晶(酔鯨酒造)、福留幸一(土佐鶴酒造)▽山内=加藤貢(秋田酒造・秋田晴)、栗林直章(栗林酒造店・春霞)、高橋藤一(齎彌酒造店・由利正宗)▽南部=板垣博司(渡辺酒造店・蓬莱正宗)▽香川=酒井史朗(西野金陵)▽奈良=北場広治(長龍酒造・慶雲長龍)▽丹波=八島公玲(西山酒造場・小鼓)▽群馬=櫻井武(浅間酒造・秘幻)▽岩手=藤尾正彦(あさ開)
※●は、上部が「直」の真(ま)