福岡の杜氏主催で酒の会 目指すは日本酒復権

2011年06月02日

 【福岡】杜氏と酌む日本酒はまた格別--。左党にとってはあこがれの存在、造り手の長、杜氏。その杜氏とふれあい、技と思いを注いだ酒の醍醐味を堪能する「杜氏と集う酒の会」が5月20日、福岡市博多区の博多サンヒルズホテルであった。日本酒造杜氏組合連合会傘下、九州酒造杜氏組合(池松勲組合長、福岡市)が企画、世話役となり、同組内・福岡県酒造杜氏組合(横尾正敏組合長)に所属する杜氏16人が参加。造り手自ら熱を込め、酒の魅力を伝えた。杜氏が奮い立ち目指したのは日本酒の復権だ。

 酒の会(有料会費制)は初の企画。杜氏主催の酒会は全国的にもめずらしい。当日は一般消費者をはじめ、酒類流通・飲食店・酒造組合・行政関係者ら220人が参加。当初計画の70人程度を大幅に上回った。杜氏自身が集客にも奔走した。

 九州酒造杜氏組合は、九州内の蔵元で日本酒を醸す杜氏ら約50人で組織。企画の実現を長年あたためてきた。酒の会には福岡県内16蔵元16人の杜氏が勢揃い。熟練の匠から新進気鋭の造り手まで、自慢の酒100種を持ち寄った。

 生き様を重ねる酒が個性を放つ。参加者は杜氏のもとへ集まり、酒談議満開。「いつも飲んでいるお酒より美味しい」との声も。杜氏がそこに居るからだ。杜氏の住まいを尋ねたり、ラベルデザインから話が弾んだり。杜氏という人間に触れた。会では、きき当てや抽選会を楽しみ、酒造り唄も披露された。福岡県「南ん子太鼓」の演奏は、杜氏の気持ちを代弁するように熱を帯びた。県酒造組合・江﨑俊介副会長は、「造っている人と一緒に、顔を見ながら飲めるのは、酒呑みにとって醍醐味。よくぞやってくれた」と称えた。

 池松組合長は、「日本酒が低迷するなか、何とか日本酒の復権につながればと考えました。日本酒を、そして福岡の酒を見直してほしい」と開催への思いを語った。あいさつの言葉に一層、思いがこもる。「品質第一により美味しいお酒を造ることが、杜氏の使命です。福岡は日本三大酒どころと称されてきましたが、本格焼酎やリキュールのブーム到来で、酒類(消費)に占める日本酒の割合は減ってしまった。これからも、ご満足いただける日本酒を造り続けますので、福岡県の日本酒を一杯でも二杯でも飲んで日本酒の輪を広げていただきたい」。

 横尾組合長も「杜氏は酒造りが大好き。酒造りの時期が近づくと、ワクワクドキドキしてくる。毎年同じ気持ち、毎年が一年生という気持ちで酒造りをしています」と語り思いを重ねた。