国税庁市販酒類調査

2014年03月31日

国税庁鑑定企画官室は平成21年度における清酒、単式蒸留焼酎、果実酒についての市販酒類の成分などを調査した結果をまとめた「全国市販酒類調査」の概要を発表した。酒税の適正かつ公平な課税の実現、酒類の品質と安全性の確保及び酒類業の健全な発達に資するため、全国の小売販売場で購入した酒類を対象に実施しているもの。

 国産酒類は清酒、連続式蒸留焼酎、単式蒸留焼酎、果実酒、ビールおよび発泡酒を対象に実施。清酒、連続式蒸留焼酎、単式蒸留焼酎および果実酒については、販売地域や課税移出数量などを参考に選定した製造者が製造している商品から、調査対象酒類を選定。ビールおよび発泡酒については、すべての製造者が製造している商品から、調査対象酒類を選定した。また、輸入酒類は各々の調査対象品目について、統計情報などを参考に調査点数を定めた上で、国内に輸入され、流通している商品から、調査対象酒類を選定した。

 調査は、成分、安全性、表示および品質評価について実施。成分の分析については、原則として国税庁所定分析法で実施したが、単式蒸留焼酎のTBA価については西谷らの方法(醸試報告、第157号、21(1985))に準じて実施。品質評価については、国税局の鑑定官、酒造技術指導機関の職員、酒類業(製造および流通)関係者、学識経験者などによって、調査対象酒類の外観や香味について評価した。

 調査結果は次のとおり。

 【清酒】

 一般酒
 ▽アルコール分=アルコール分は年々低下傾向にあるが、ここ数年はほぼ横ばいで推移している。
 ▽日本酒度=日本酒度は、ここ数年横ばいからやや上昇傾向にある。各都道府県別(平均値)では、日本酒度が高いのは富山県、香川県、高知県、低いのは佐賀県、長崎県、三重県。
 ▽総酸=総酸は、年々低下傾向にあったが、ここ数年はほぼ横ばいに推移する傾向にある。各県別(平均値)では、総酸が高いのは兵庫県、奈良県、島根県、低いのは静岡県、群馬県、岡山県。
 ▽アミノ酸度=アミノ酸度は年々低下傾向にあり、ここ数年はほぼ横ばいで推移している。各県別(平均値)では、アミノ酸度が高いのは青森県、大分県、熊本県、低いのは長野県、群馬県、宮城県、埼玉県。
 ▽甘辛度・濃淡度=各県別(平均値)では、甘口タイプなのは長崎県、岡山県、大分県、辛口タイプなのは香川県、富山県、高知県。また、濃醇タイプなのは兵庫県、佐賀県、奈良県、淡麗タイプなのは静岡県、埼玉県、新潟県、群馬県。
 ▽製造法=製造法の経年変化を見ると、過去は糖類を使用して製造された清酒が主流だったが、平成6年度以降は糖類を使用しないで製造された清酒が割合で常に上回っており主流となっている。

 特定名称清酒
 ▽アルコール分=アルコール分はいずれの特定名称清酒でもここ数年ほぼ横ばいで推移しており、本年度の調査でも、吟醸酒、純米酒および本醸造酒のいずれにおいても、前年度からほぼ横ばいで推移した。
 ▽日本酒度=日本酒度は一般酒に比べると、いずれの特定名称清酒でも高い傾向があった。経年変化でも上昇傾向にあるが、純米酒では、前年度より若干低下傾向が見られた。
 ▽総酸=総酸は一般酒と比べると、吟醸酒と本醸造酒はあまり変わらないが、純米酒はやや高い傾向があった。経年変化でも同様の傾向を示しており、ここ数年は低下傾向にある。
 ▽アミノ酸度=アミノ酸度は一般酒と比べると、吟醸酒と本醸造酒はあまり変わらないが、純米酒はやや高い傾向が見られた。経年変化でも常に純米酒のアミノ酸度が最も高い傾向にあることには変わらないが、吟醸酒、純米酒、本醸造酒のいずれにおいても、若干の減少傾向が続いている。
 ▽甘辛度・濃淡度=甘辛度は一般酒に比べると、いずれの特定名称清酒でも低く辛口な傾向があり、特に純米酒の辛口傾向が強いものとなっている。濃淡度は一般酒と比較すると、いずれの特定名称清酒でも高く濃醇な傾向があり、特に純米酒の濃醇傾向が強いものとなっている。
 ▽吟醸酒の香気成分=香気成分の経年変化を見ると、バナナ様の芳香がある酢酸イソアミルが平成8年度と平成12年度に大きく低下した以外はほぼ横ばいに推移していたが、今年度は前年度より大きく低下した。また、リンゴ様の芳香があるカプロン酸エチルは年々増加する傾向にある。

 容器の容量と種類
 容器の容量と種類は一般酒と特定名称清酒とで違いがある。容器の容量については、一般酒では1・8l容器が大部分を占めていたが、吟醸酒では720ml容器が4割以上を占めていた。容器の種類については、吟醸酒と純米酒では緑色瓶がほぼ半数を占めていたが、本醸造酒と一般酒では茶色瓶がほとんどで、一般酒では紙パックも見られた。

 【単式蒸留焼酎】

 単式蒸留焼酎のアルコール分は、泡盛において高い値を、また総酸は黒糖焼酎において高い値を示した。TBA価は、単式蒸留焼酎の油香の強さと相関する指標だが、泡盛では高い値を、米焼酎では低い値を示した。
 紫外部吸収は後留成分に多く含まれる香味成分であるフルフラールの量と相関する指標だが、泡盛では高い値を、酒粕焼酎では低い値を示した。

 【果実酒】

 果実酒のアルコール分は、白ワインにおいて高い値を、また総酸はロゼワインで低い値を示した。